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- 「マニフェスト」って何?政権公約ではありません!
マニフェストは産業廃棄物の適正処理のために必要です
「マニフェスト」と聞いたとき、多くの方は選挙をイメージすると思いますが、
今回ピックアップする「マニフェスト」は全く違うものであることを前置きします。
締結した処理委託契約書に基づいて産業廃棄物を処理業者に引き渡す際には、
排出事業者は産業廃棄物管理票(一般的にマニフェストと呼ばれています)を同時に交付する必要があります。
一つは物流管理票として運搬が確実に行われたことを証する役割です。もう一つの役割は処分証明です。
この二つの役割を一つの伝票に持たせることで、廃棄物の適正処理をサポートするしくみの一端を担わせることにしたものです。
マニフェストの交付は排出事業者に課せられた法律上の義務で、排出事業者は廃棄物を業者に引き渡す際に、
同時にマニフェストを交付する必要があります。
実際の現場で使用されているマニフェストの代表的な2つの書式と電子マニフェストについて説明します。
- 8枚の複写式で直行用と積替え用の2種類が用意されています。
- 積替え用は遠隔地の処分場に運搬する場合に、中継地(積替保管場所)を経由するときに使用します。
- 運搬区間がいくつか分けられるため、区間委託用伝票と呼ぶ人もいます。
- いずれの書式にも法廷書式の記載事項に加え、産業廃棄物の名称を記載する欄、照合確認欄、備考・確認欄が追加されています。
- 全国産業廃棄物連合会版と異なるところは、書式が1種類であること、廃棄物の名称欄がないこと、
追加記載事項欄が大きいこと、そして廃棄物の種類に「混合廃棄物」という項目があることです。
- 積替保管場所が二つ以上あるなど規定の記入欄だけでは表現しきれない場合に、追加記載事項欄を使って表現します。
- 建設現場では解体工事の下ごみなど、数種類の廃棄物が混合状態で発生することが多いため「混合廃棄物」を設けています。
JWネットでは、電子マニフェストの優位性について、下記の4点を挙げています。
特に事務の効率化については、年間で3,000時間もの作業時間の軽減が図れたとのアンケート結果もあるようです。
- 事務の効率化
- 法令遵守のしやすさ
- データの透明性
- 交付等状況報告書の提出義務の免除
マニフェストには原則として次の6つの運用基準があります。
- 排出事業者が交付する
- 廃棄物種類ごとに交付する
- 運搬先の事業場ごとに交付する
- 廃棄物の引き渡しと同時に交付する
- 処理委託契約書とマニフェストの記載内容に相違がないこと
- 使用したマニフェストは写しを5年間保存する
1~4の項目は交付に関する規定、5は記載内容に関するポイントです。いずれの場合も罰則規定に抵触する行為です
ので、マニフェストの作成と交付は排出事業者にとって手を抜くことのできない業務の一つであるといえます。
続いてマニフェストの運用フローですが、大きく分けて以下の8項目があります。
マニフェストに必要事項を書き込み、廃棄物の引き渡しと同時に収集・運搬業者に交付する
廃棄物を受け取るとともにマニフェストを受け取り、運転手名などの必要事項を書き込み、控えを排出事業者に渡す
廃棄物とマニフェストをマニフェストで指定された処分場まで運搬する
収集・運搬業者からは廃棄物とマニフェストを受け取り、受領印を押して写しを収集・運搬業者に返却する。
受け取った廃棄物はマニフェストで指定された方法で処分する
処分業者から受け取ったマニフェストの写しのうち1枚を排出事業者に回付する
廃棄物の処分終了後、収集・運搬業者に処分終了印のあるマニフェスト写しを回付する
処分業者は(6)と同様に、マニフェストの写しを排出事業者に回付する
中間処理後廃棄物の処理を(1)~(7)のプロセスを経て行い、最終処分完了印のある
マニフェストを受け取ったのちに、最終処分完了印のあるマニフェスト写しを排出事業者に回付する
廃棄物処理は、「排出事業者が責任を持って処理しなければならない」と法律で義務付けられています。
ただ、自ら処理することができない排出事業者は、処理を事業者に委託することになり、
その際には契約を交わし、廃棄物が発生した時にはマニフェストの交付が必要です。
しかし、このような契約の締結やマニフェストの交付はあくまでも書類行為にすぎません。
仮に処理事業者が廃棄物を不法投棄した場合でも、責任は排出事業者にあるのです。
ですから、排出事業者は廃棄物処理を委託する場合、この事業者は本当に委託して大丈夫なのか慎重に選ぶ必要があるのです。
参考文献:上川路宏/著 「産廃処理が一番わかる」
技術評論社 2015年