水害で濡れた家具や家電、畳などは災害廃棄物として扱われるため、通常の粗大ごみと同じ方法で出せるとは限りません。
まず自治体が案内する分別方法や収集日、仮置場を確認し、指定された場所と方法で出してください。
片付けを始める前には住宅や家財の被害状況を撮影し、浸水した高さや破損した箇所が分かる写真を残します。
写真は罹災証明書の申請や保険会社への損害報告で被害の程度を確認する資料となるため、処分前に撮影してください。
室内には割れたガラスや浮き上がった床材が残っている場合もあるため、防水手袋や長靴を着用して作業します。
この記事では、水害と水害ごみの意味から、種類ごとの分け方、処分方法、家庭と事業所で異なる扱いまで順番に解説します。
水害とは?

水害とは河川の増水や大雨による排水不良、高潮などにより、人命や住宅、土地、設備などが被害を受ける災害です。
国土交通省では、洪水・内水・高潮による浸水被害を水防の対象として扱っています。
外水氾濫は増水した河川の水が堤防を越えたり、堤防が決壊したりして、市街地や田畑へ流れ込む現象です。
内水氾濫は下水道や水路の排水能力を雨量が上回り、河川から離れた地域でも道路や住宅が浸水します。
高潮は台風や発達した低気圧によって海面が上昇し、沿岸部や海抜の低い地域へ海水が流れ込む現象を指します。
いずれも床上・床下浸水を引き起こし、建物や家財だけでなく、電気・水道などの生活基盤にも被害が及びます。
水が引いた後は、住宅内に流れ込んだ泥の除去と、使用できなくなった家財や建材の片付けが同時に始まります。
その過程で短期間に大量の水害ごみが発生するため、自治体の案内に沿った分別と処理へつなげてください。
水害ごみとは?最初に知っておきたい3つの基本

水害ごみは水害によって生じた災害廃棄物
環境省は、水害によって一時的に大量発生する廃棄物を「水害廃棄物」として扱っています。
本記事では、水害によって生じた災害廃棄物を、読みやすさを考慮して「水害ごみ」と表記します。
具体的には浸水で使えなくなった家財や建材、洪水で流れ着いた流木・廃プラスチックなどが該当します。
水分や泥を含んだ畳・布団・木製家具などは重くなり、保管中に腐敗・カビ・悪臭が生じやすい点が特徴です。
水害を直接の原因として生じた物かを確認し、自治体が示す方法に沿って分別と処理を進めてください。
片付けごみと家屋の解体ごみに大きく分けられる
水害による災害廃棄物は発生する場面によって片付けごみと家屋の解体ごみに分けられます。
国立環境研究所も、被災者が出すごみと家屋の解体で生じるごみを区別して整理しています。
| 区分 | 発生する場面 | 主な物 |
|---|---|---|
| 片付けごみ | 浸水した住宅や敷地の片付け | 使用できなくなった家財や生活用品 |
| 家屋の解体ごみ | 被災した住宅の解体・撤去 | 柱、壁材、屋根材、基礎など |
片付けごみは被災直後から集中して出る一方、解体ごみは家屋の解体工事に伴って発生します。
排出する時期や処理経路が異なるため、両者を混ぜず、それぞれ自治体や解体業者の案内に従ってください。
通常の生活ごみとは出す場所や時期が異なる
水害時は日常生活から出る生ごみなどと、浸水によって生じた片付けごみを分けて排出します。
生活ごみの収集が継続される地域でも、片付けごみには別の収集日や仮置場が指定される場合があります。
静岡市は排出方法を案内するまで、災害ごみを道路や公園へ出さず敷地内で保管するよう呼びかけています。
収集体制は被害状況や自治体によって異なるため、公式サイトや防災情報を確認してから出してください。
水害ごみを捨てる前に確認すること

防水手袋や長靴を着用して安全を確保する
浸水した住宅には汚れた水や泥が残り、その中に割れたガラスやくぎが隠れていることがあります。
厚生労働省も、被災家屋の清掃では感染症やけがを防ぐ服装を案内しています。
- ✅厚手の防水手袋
- ✅踏み抜き防止用の中敷きを入れた長靴
- ✅長袖・長ズボン
- ✅防じんマスクと保護メガネ
水を含んだ畳や家具は重いため、一人で持ち上げず、複数人で周囲を確認しながら運んでください。
建物の傾きや床の損傷、漏電の危険がある場合は立ち入らず、自治体や専門業者へ相談します。
動かしたり捨てたりする前に被害状況を撮影する
片付ける前に建物の外観を四方向から撮影し、室内は部屋全体が分かる写真と被害箇所の近接写真を残してください。
壁に残った浸水跡は、メジャーを添えて水の高さが分かるように撮り、処分予定の家財も一つずつ記録します。
政府広報オンラインは、住宅や家財を片付ける前に被害状況を撮影するよう案内しています。
写真は罹災証明書の申請や保険会社への損害報告で被害を確認する資料となるため、品名や数量も併せて控えてください。
回収方法・必要書類・処理費用を自治体に確認する
水害ごみを片付ける前に、回収方法・持参する書類・処理費用の3点を自治体へ確認してください。
仮置場の開設や手数料の減免が行われる場合もありますが、対象品目や利用条件は地域ごとに異なります。
- ✅回収の申込方法、持込先、受付日時、受入品目
- ✅本人確認書類、罹災証明書、申請書などの提出物
- ✅処理手数料、減免の対象、申請方法と受付期限
減免の申請時期や必要書類は自治体によって異なり、持込み前の手続きが条件となる場合もあります。
一度確認した後も、受付場所や期間が変更されていないか、搬出当日に公式情報を確かめてください。
水害で発生したごみを分別する
水害ごみを混ぜて排出すると、仮置場で改めて選別する作業が生じ、再資源化や焼却までの処理が遅れます。
搬出前に自治体の分別方法を確認し、安全に扱える範囲で指定された品目ごとにまとめてください。
家具・畳・布団などの大型ごみ
家具は中身を取り出し、運搬中に扉や引き出しが開かないよう、ひもやテープで固定してください。
切断や分解の条件は自治体によって異なるため、受入基準を確認するまでは元の形を保ちます。
畳や布団は家具と一緒に積み上げず、仮置場の区分に合わせて品目ごとにまとめて搬出します。
美里町も、家具・畳・布団を混ぜず、できる限り1種類ずつ運ぶ方法を案内しています。
テレビ・冷蔵庫などの被災家電
浸水した家電は内部に水分や泥、塩分が残り、通電すると感電や発火につながるため、電源を入れないでください。
製品評価技術基盤機構も、そのまま使用せず、メーカーや販売店へ相談するよう案内しています。
家庭用のエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象となる4品目です。
自治体による臨時回収と通常のリサイクルルートのどちらを利用するか確認し、ほかの家電と分けて搬出してください。
柱・木材・瓦などの家屋解体物
片付けで出た柱や木材、瓦、コンクリート、金属などは混ぜず、自治体の区分に沿って材質別にまとめます。
解体・修繕工事で業者が排出した廃材は住民向け仮置場へ持ち込まず、工事業者へ処理方法を確認してください。
外壁材や屋根材、断熱材には石綿が含まれている場合があるため、自分で切断したり砕いたりしてはいけません。
環境省も、石綿を含む可能性がある廃棄物は破損を避け、ほかのごみと分けて扱うよう示しています。
宅地内に流れ込んだ泥・土砂・流木
泥や土砂は水害ごみとして回収する自治体と、土木部門などが別に扱う自治体に分かれます。
家庭ごみと混ぜず、自治体が案内する袋や集積場所を確認してからまとめてください。
環境省は、洪水で堆積した土砂や砂泥に生活用品、化学物質などが混ざった物を「土砂系混合物」としています。
目視できる流木や枝は安全な範囲で土砂と分け、油膜や薬品の臭いがある場合は近づかず自治体へ連絡してください。
ガスボンベ・薬品などの危険物
ガスボンベ、消火器、灯油、農薬、塗料、バッテリーなどは、発火や液漏れのおそれがあるため、ほかの災害ごみと混ぜないでください。
環境省北海道地方環境事務所の資料でも、バッテリー、消火器、ガスボンベ、灯油、農薬などを、ほかのごみと分けるよう案内しています。
容器に穴を開けたり、中身を移し替えたりせず、品名が分かる状態で自治体や販売店へ相談してください。
ガス漏れや発火など差し迫った危険がある場合は近づかず、安全な場所へ退避して119番へ通報します。
薬品や油が漏れている場合は容器に触れず、自治体または消防へ品名と周囲の状況を伝えてください。
生ごみ・紙おむつ・し尿など衛生面への対応を急ぐごみ
生ごみや紙おむつは、水害で壊れた家財と分け、片付けごみの仮置場へ持ち込まないでください。
袋の口を固く閉じ、収集まで直射日光を避けて保管します。
携帯トイレのし尿は凝固剤や吸収材で固め、袋を二重にして漏れや飛散を防いでください。
排出区分は自治体によって異なるため、災害時の収集案内を確認してから出します。
名古屋市は生活ごみと袋を分けて出す方法を案内し、西東京市は災害時に可燃ごみとは別に出すよう示しています。
自治体の案内に沿って選ぶ3つの処分方法
自治体が指定する場所や収集日に出す
自治体が戸別収集を行い、事前申込みを求めている場合は対象品目や数量を伝えて申し込んでください。
受付時に指定された収集日と搬出場所を守り、通常のごみ集積所には出さないでください。
八千代市では令和8年8月の大雨被害に伴う災害ごみについて戸別収集を受け付け、種類ごとに分別しておくよう案内しています。
道路状況によって日程が変わる場合もあるため、搬出前に申込内容と自治体の最新情報を照合します。
仮置場や処理施設へ自分で持ち込む
自力で搬出できる場合は自治体が開設した仮置場または指定処理施設へ、受入品目ごとに分けて搬入します。
運搬中の荷崩れや飛散を防ぐため、積み過ぎを避け、ロープやシートで荷台を覆ってください。
姶良市ではあらかじめ品目ごとに分類して積載し、誘導員の指示に従って搬入者が荷下ろしするよう案内しています。
場内の車両動線を守り、指定された区画へ順番に下ろした後は、速やかに退出してください。
持ち込めない場合や受入対象外の物は自治体へ相談する
車両を用意できない、けがや高齢で運べないなど、自己搬入が難しいときは自治体へ搬出方法を相談してください。
姶良市のように、災害ボランティアセンターと連携して自宅へ車両を派遣する自治体もあります。
仮置場や処理施設の受入対象外となる品目は、販売店や製造者、許可業者など別の処理先を確認します。
自己判断で搬入せず、品名や数量、破損・液漏れの有無を窓口へ伝え、案内された方法で処分してください。
家庭と事業所で異なる処理ルール
家庭から出た水害ごみは市区町村の案内に従う
家庭で使用していた家具や生活用品が浸水で使えなくなった場合、市区町村が処理を担う災害廃棄物に当たります。
同じ机や家電でも、家庭生活から出た物か事業活動から出た物かによって処理ルートが変わるため、排出元を基準に区別してください。
大阪府は市町村の役割として、災害時の生活ごみや災害廃棄物の処理を挙げています。
避難先や近隣自治体ではなく、ごみが発生した住宅の所在地を管轄する市区町村へ問い合わせてください。
事業所から出たごみは自治体の受入条件を確認する
店舗や事務所、工場で浸水した在庫・什器・設備は事業系ごみに区分され、事業者の責任で処理するのが原則です。
秋田市は家庭から出た災害ごみを原則対象とする一方、朝霞市は店舗などから出た災害廃棄物も受入対象としています。
自治体によって対応が分かれるため、品目と発生場所を伝え、家庭向け仮置場へ搬入できるか確認してください。
受入対象外の場合は、廃棄物の材質や発生工程に応じて事業系一般廃棄物と産業廃棄物に区分し、それぞれに対応する許可業者へ処理を委託します。
水害ごみを減らすため平常時にできる3つの備え
水害ごみの量は浸水しやすい場所から家財を移し、水の流入を抑え、不要品を整理しておくことで減らせます。
自宅周辺の浸水リスクをハザードマップで確認したうえで、次の3つに取り組んでください。
- ✅家財の保管場所を見直す:家電や書類、衣類などを1階の床や低い棚へ置かず、高い棚や上階へ移します。
- ✅住宅への浸水を防ぐ:玄関や床下換気口へ止水板を設置し、排水設備の逆流防止弁や雨どいも点検します。
- ✅不要品をため込まない:使える物は売却・譲渡・リサイクルへ回し、それ以外は平常時のルールで処分します。
国土交通省・経済産業省の「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」は、止水板の設置や排水設備からの逆流防止措置を浸水対策として挙げています。
京田辺市も、不要品の整理が災害ごみの削減につながると案内しています。
大雨が迫ってから重い家具を動かすと危険を伴うため、日頃の片付けや住宅設備の点検と併せて対策してください。
まとめ|水害ごみを適切に処理するための3つの原則
水害ごみの片付けは安全を確保して被害を記録した後、自治体のルールに沿って進めます。
処理の基本となる3つの原則は、以下のとおりです。
- ✅安全と記録:防水手袋・長靴の着用と、家財を動かす前の被害撮影
- ✅分別と搬出:家具・家電・建材・土砂・危険物の区分と、指定場所への搬出
- ✅条件の確認:回収方法・受入品目・家庭と事業所で異なる処理ルールの照合
片付けを始める前に自治体の最新情報を確認し、防具と撮影手段をそろえたうえで作業に入ります。
重い家財や危険物は無理に動かさず、自治体または自治体が案内する専門業者へ相談してください。
水害ごみに関するよくある質問
水没した自動車やバイクは災害ごみとして出せますか?
一般の片付けごみとは処理ルートが異なるため、自治体の案内を確認せず仮置場へ搬入してはいけません。
環境省中国四国地方環境事務所の資料に沿い、自動車は引取業者、バイクは廃棄二輪車取扱店などへ相談してください。
浸水した太陽光パネルや蓄電池に触れても大丈夫ですか?
触れないでください。浸水した太陽光パネルや蓄電池は感電のおそれがあるため、自分で電源操作や撤去を行ってはいけません。
経済産業省も、破損・浸水した太陽光発電設備へむやみに近づかないよう注意を呼びかけています。
周囲に人を近づけず、設置業者やメーカーへ連絡してください。
賃貸住宅で発生した水害ごみは借主と貸主のどちらが処分しますか?
借主が所有する家具や家電は、借主が自治体の案内に沿って処分します。
備え付けの設備や建材は貸主の所有物に当たるため、無断で取り外したり捨てたりしないでください。
国土交通省は、賃貸住宅に修繕が生じた場合、借主の責任の有無にかかわらず管理会社などへ通知するよう示しています。
処分や修繕を始める前に管理会社へ連絡し、費用負担と作業範囲を確認してください。
水害ごみの撤去・処分費用は火災保険の補償対象になりますか?
契約に水災補償や残存物取片づけ費用が含まれ、保険金の支払要件を満たす場合は、撤去・処分費用の一部が補償されます。
日本損害保険協会も補償範囲は商品ごとに異なると案内しているため、処分前に保険会社へ連絡し、見積書や領収書を保管してください。
民間の片付け業者へ依頼するときは何を確認すればよいですか?
環境省によると、家庭の廃棄物を回収できるのは、市区町村の一般廃棄物処理業許可または委託を受けた業者です。
片付け作業と回収・運搬を別の事業者が担う場合は、実際に回収・運搬する事業者の許可または自治体からの委託まで確認してください。
作業範囲・総額・追加料金・処分先を書面で確かめ、国民生活センターの案内どおりその場で契約せず、複数社の見積もりを比較してください。














